[日本語]BCCJ Member Spotlight: Terrie Lloyd

Written by BCCJ
May 26, 2021
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May 26, 2021
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テリー・ロイド氏(Terrie Lloyd)は日本在住37年目の起業家であり、世界最大の日本のインバウンド旅行コンテンツを抱えるWebポータルである Japan Travelを運営するJapan Travel KKのCEOです。

 自己紹介とあなたが日本に来たきっかけをお聞かせください。

日本での在住暦は37年になります。初めて日本を訪れたのは1983年の3月に日本のワーキングホリデービザを取得した時になります。日豪でワーキングホリデービザの発行が始まって初めての派遣組でした。その時は日本について特に何の知識もありませんでしたが、日本をとても気に入ってしまい、日本に腰を据えることにしました。当時の日本は新たな事業を始めたい人にとっての好機がたくさんあり、私も日本を訪れてから6ヶ月目に起業をする決意をしました。

 

日本や日本文化に対する最初の印象は何ですか?

まず、東京がいかにコンクリートに満たされているかに衝撃を受けました。しかし、その外に出てみると、古き善き日本をまだそこに見ることができます。これは日本旅行がとても魅力的である理由の一つです。

また、日本は技術的にとても先進的であると思いました。今もそうであると言えるでしょう。ですが、日本は製品やサービスを自国向けに作りがちです。日本が技術革新を起こすたびに、世界が追いつき、追い越していってしまうので、日本が相対的に遅れて見えてしまいます。カーボンファイバーや新幹線、半導体などがいい例です。日本は一度世界を席巻しましたが、今は世界を主導しているとは言えないでしょう。しかし、日本は今でも多くの技術革新をうちに秘めています。人々は日本は今や発明において不得手であると言いますが、私はそうであるとは思いません。日本人はただ商業化やマーケティングが苦手なだけであると考えます。

今必要な挑戦は、技術革新とその商業化にあるギャップをどう埋めるかにあるでしょう。そして、その役割は、言語や文化のバリアを乗り越えた私達や他の会社にとっての好機です。

 

Japan Travelのアイデアはどこから得ましたか?

Japan Travelのオリジナルのコンセプトは、東日本大震災で福島の問題が取り沙汰されましたが、日本の残りの部分、例えば四国や九州や沖縄、北海道は大丈夫であるということを世界中へ発信するものです。

当時も今も、私は逆張り投資戦略の支持者です。逆張り投資戦略というのは、市場落ち込んでいる時こそ投資のチャンスと捉える考え方ですが、東日本大震災が起こった2011年においては、訪日外国人数は800万人から600万人まで落ち込んでいました。そこで震災や放射線問題において深刻な影響を受けた旅行産業やインバウンド旅行産業に目をつけたわけです。

そこで、私は以前に開発したクラウドソースコンテンツの作成や管理のための技術を使うことにしました。我々が保有しているのは、Executerというプラットフォームで、これを旅行というコンテンツに直結させています。ただ、実はこれを思いついたのはある夢を見たのがきっかけで、全然科学的な思いつきだとかではありません。ただ、私の中でずっと温めてきたアイデアではあります。

そうして旅行産業に参入しましたが、最初のメンバーは私ともう一人しかいませんでした。そこで、私は日本に滞在しているおよそ300人くらいの友人に、最初の在日外国人による日本国外の人々のためのコミュニティであるJapan Travelのライターになることを頼みました。そうして日本は無事であることを発信しようとしました。結果的に、連絡をとった多くの友人が助けを申し出てくれました。多くの人々が震災で悲嘆に暮れる中で、何か復興のための助けをしたいと考えていたのでしょう。300人から始まったライターは1000人に増え、今もどんどん増え続けています。現在では1万8000人を超えるライターがコミュニティに参加し、今ではGoogleで検索すると政府系メディアを除きJapan Travelがトップの表示数を誇ります。

 

Japan Travelのコンセプトを他国で実施する予定はありますか?

現在はタイで試験的な運営を行っています。また、インドネシアでも人事関係の案件でお話を頂いています。我々がこのコミュニティを運営するプラットフォームは、非英語圏の国にとって理想的です。なぜなら、我々の特許はいかに地元の人々に母国語でコンテンツを作ってもらうかと、いかにそれを人々に翻訳してもらうかというところにあるからです。

ですから、例えばタイのような国を例として挙げるなら、タイの中でもいくつかの地域はとても観光地として人気ですか、殆どの地域はまだ知られていません。そういう国こそが、Japan Travelのモデルがまさにフィットする場所だと考えています。しかし、正直に言えば、他国のことよりも、私は今日本のことで忙しすぎます。今でも多くの事が起こっていますし、日本はとても巨大で魅力的な市場ですね。

 

 新型コロナウイルスにJapan Travelはどう適用しましたか?

我々の会社には、3つの部門があります。1つ目は、マーケティング・出版部門です。ここはコロナに関わらず順調です。2つ目は旅行代理店部門です。コロナのことが取りざたされるようになった去年の2月中頃から6週間以内に、当部門の業績は年間数百万ドルからゼロになってしまいました。これは非常に深刻なインパクトです。3つ目はソフトウェアオペレーション部門です。我々は顧客のプロジェクトやユーザーアプリケーションのためのソフトウェアを多数開発しています。現在では、旅行代理店のための旅行産業に関連するいくつかのソフトウェアを開発中です。その点で言えば、ソフトウェア部門はこの状況で得をしているかもしれませんね。なぜなら、コロナにより大変なプロダクトやより広範囲に及ぶ機能の開発などに割く時間が生まれたからです。私がコロナ禍において学んだのは、旅行産業にはより多様化が必要であるということでしょうか。

第二に、一部のチームの業務が新型コロナウイルスによって深刻な影響を受けたときは、そのチームに新たな役割を与えることができます。例えば、我々の中で一番影響を受けた旅行代理店部門は、現在はより多くのコンテンツを作成し、より多くの言語で閲覧可能にする作業を行っています。最近ではドイツ語とイタリア語が利用可能になりました。よって、Japan Travelは現在15言語で閲覧することができます。また、これはより長期的な取り組みですが、我々はバーチャルツアーのエキスパートになり始めています。現在は、新型コロナウイルスの影響で日本に来れない大学や企業などを含む海外の団体向けのツアーに取り組んでいます。

 

最新技術を日本の旅行産業に活かせるチャンスはあるでしょうか?

旅行業界は非常に競争が激しく複雑な業界です。多くのサービス提供者や関連業者が多く、とても流動的ですね。ですから、新しいスタートアップ企業や最新技術が育ちやすい土壌だと思います。アクティビティ関係では、KlookやGet Your Guide、日本ではAsoview!やVeltraがいい例でしょう。彼らのような会社はテクノロジーを使って非常に興味深いことをやっていて、ツアーオペレーターが自動で旅行の予約やキャンセル、支払いや業務のマネジメント等を行うことができます。

なので、旅行業界は面白いエリアですね。最近では、私は予測分析に取り組んでいます。予測分析というのは、特定の顧客や市場のセグメントの動向を予測するものです。例えば最近予約したチケットであるとか、どのリンクからサイトに飛んだかというデータは全て収集されているので、企業としてはそういうデータにアクセスして解析できれば、それに基づいた非常に興味深いカスタマーサービスを提供することができます。

最後に、旅行産業は現在世界中で停滞状態にあります。ですが、そうでなければ旅行産業は世界で最大の産業です。渡航規制が解除されれば、急速な回復が見込まれるでしょうし、多くの人々が旅行産業に再参入するはずです。ですから、我々は旅行代理店やオンライン旅行代理店が市場に再参入することを助けるソフトウェアに非常に強い需要を見込んでいます。

前に言ったように、我々のソフトウェア部門は非常に熱心に旅行業界のためのソフト開発に取り組んでいるので、市場が再開するであろう7月頃にはもうソフトの開発は終了して販売を開始することができるはずです。

 

あなたが次に成し遂げたいことは何ですか?

私はまだ旅行産業にかかりっきりです。我々の次のプランは株式上場で、これがだいたい今後5年の計画になっていくと思います。個人的なことでは、今発酵食品にとても興味を持っています。発酵食品は、私が地方自治体にアプローチするときや伝統的なビール醸造所のツアー企画において重要な要素の一つです。私が醗酵食品にこだわる理由の一つが、近年の研究によれば、人間の腸内環境と精神衛生には強い関係があるということです。また、私はアルツハイマー病患者のケアにも関心がありますが、同じようにアルツハイマー病やその他の多くの脳に関連する病気は我々の食事と腸内環境に関係しているようです。醗酵は腸内環境を改善するプロバイオティクス製品を作る上で主要な手段の一つです。だから醗酵食品というのはとても興味深いですね。

また、私は自分でも自宅でサワードウパンづくりにこだわっています。私が今試しているのは、日本の食品と海外の食品、文化を混合させることで、例えば、パンの生地に酒粕を混ぜるようなレシピです。私が知る限りでは、うまく焼ける酒粕を使うパンのレシピを知っているのは私だけでしょう。このレシピを使って焼いたパンはとてもおいしいですよ。また、それらの延長で、まだウェブサイトは作成していませんが、インターネットドメインも取得しました。次の5年間で株式上場したあとは、より深く食品関係のことに取り組みたいと思っています。醗酵食品と食品のいいところは、実はこの2つが旅行にとても深く関わっていることです。約86%の訪日観光客の一番の目的、日本について一番にしたいことは日本食を食べることです。買い物でもなく、観光でもなく、食べ物なんですね。観光客は彼らの胃や味覚でものを考えながら来るわけです。なので、私が好きな旅行と食べ物という2つのことを同時にできることはとても喜ばしいです。

 

酒粕を使ったサワードウパン(左), 3年熟成の醤油を貯める大桶(右)

 

最後に、Japan Travelについて少しお伝えします。我々はコロナ禍において、重大な選択を迫られました。なぜなら、新型コロナウイルスによって旅行が制限されたからです。我々の選択肢は、事業を縮小して好機を待つか、その反対の事業はそのまま、新しい製品やサービスを開発するかでした。そして、我々は後者を選びました。

その状況下で、日本政府は従業員向けの補助金を発表しました。そのうちの一つが従業員の複数の技能を鍛えるクロストレーニング向けのものです。私はこれが我々の旅行代理店部門のメンバーが新しい技能やクロストレーニングをする非常にいい機会であると思いましたし、これが我々がバーチャルツアーをはじめたきっかけでもあります。

バーチャルツアー事業は日本で行う外国市場向けのビジネスの中で、大きなプレイヤーになりうるでしょう。ニューヨーク・タイムズは5週間前ほどに、世界中の5つのバーチャルツアーを紹介する記事を出しましたが、そのうち日本で紹介されたのが我々のツアーのうちの一つです。そこで選ばれたのは下北沢での古着ツアーです。古着ツアーが選ばれたのは少し意外でしたが、実はそのツアーはAmazonとの共催で行ったものです。Amazonのツアーパートナーは10社ありましたが、選ばれたのは我々のみでした。我々がAmazonと提携した事と、ニューヨーク・タイムズに取り上げられたことによって学んだことは、バーチャルツアーにおいて大事なのは即時性とYoutubeのガイド動画と違いツアー先に実際に誰かがいて何かをしてくれることです。

例えば、我々の古着ツアーでは、参加者は実際に服を買うことができます。他にも、例えばアニメや蒐集品などの知識がある人が現地に赴いて、参加者はその人を通してものを買うというようなことが可能です。その点では、バーチャルツアーは買い物代行サービスと旅行の融合体とも言えますね。とてもユニークで若者受けがいいコンセプトだと思います。特に若い消費者や企業は、彼らの顧客や従業員へ感謝の印として海外旅行を送ったりしますが、今はそれができません。なので、我々のような会社にチャンスが回ってきます。

このように、日本政府が失業者の大量発生を防ごうとするために、全額では無いにしても、給料の2/3の金額に対して補助金を出していますが、この補助金のいいところは、これによって我々が新しい製品やサービスの開発ができているというところです。この補助金は研究開発手当と言い換えることもできるでしょう。これが日本政府の意図したところなのかはわかりませんが、このような補助金をきっかけにする研究開発というのは、我々だけではなく他の多くの会社にも起こることだと思います。これは非常に興味深く面白いことで、不幸中の幸いです。これによって、旅行制限が解除された時のポストコロナにおける日本の競争力は高まることが期待できます。なぜなら、我々には他の国がまだ持っていないこれらのサービスがあるのですから。