BCCJ Member Spotlight – Rachna Ratra (日本語)

Written by BCCJ
March 8, 2023

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March 8, 2023

翻訳者:宮下朋霞(BCCJジュニア編集者)

BCCJジュニア編集者のベンジャミン・シーモンズと宮下朋霞は、ロバート・ウォルターズ・ジャパンのラチナ・ラトラ氏に、リーダーシップへの移行、DEI戦略を実施することによる持続的なメリット、企業の現状に挑戦する非正規雇用のグループへの影響などについて話を聞きました。

 

インタビューにご協力いただき、ありがとうございます。そして、ロバート・ウォルターズ・ジャパン マネージング・ディレクター東京への就任、おめでとうございます。まず、あなたの経歴と日本に来たきっかけについて教えてください。

私の日本との関係は、10代で何度か日本を訪れ、日本という国とその文化に強く惹かれたことから始まりました。 1998年に文部科学省の奨学金を受け、大阪大学外国語学部の修士課程で学び、自分の興味を追求することができました。

卒業後は、東京に移り住みました。マーケティング会社と人材紹介会社で数年働いた後、2004年にアソシエートとしてロバート・ウォルターズ・ジャパンに入社しました。その数年後にはチームを率いるようになり、2012年にはディレクターに就任しました。直近では、70名のコンサルタントを抱え、14チームで構成されるセールス&マーケティング部門を統括し、今年初めには東京オフィスのマネージング・ディレクターに任命されました。

 

あなたは、ロバート・ウォルターズ・ジャパンが2000年に事業を開始して以来、初の女性マネージング・ディレクターとなりました。この快挙は、あなたにとって、そして女性のリーダーシップ全体にとって、どのような意味を持つのでしょうか?

私にとっては非常に大きな意味を持つものです。女性がトップリーダーとして活躍することを阻む障壁を取り除き、ステレオタイプに挑戦するということを意味しています。私が人材紹介業へ携わるようになった当時は、男性優位の業界であり、管理職に就いている女性は明らかに少なく、この業界にはほとんど女性がいないように感じられました。

このような状況下で、私は自身が昇進し、リーダーとして活躍できるのかどうかを疑問に感じていました。しかし、節目を迎え、昇進を重ねるごとに、リーダーとして活躍することを身近に感じられるようになりました。たとえ、同じような経歴の人がいなくても、信念さえあれば、自分がその道を切り拓くパイオニアになれる。そして私が築いてきたようなリーダーシップが、日本の文化の一部となり、多様性の価値を理解できる文化へと進化していくことを心から願っています。

 

ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)を推進することが、日本や世界経済の将来の成長と持続可能性にとって非常に重要であると考える理由は何でしょうか?

まず第一に、この重要なテーマをすべての企業が話し合っていないのであれば、今すぐにでも始めなければならないと思っています。DEIを推進することは、正しい方向であり、より多くの人々に利益をもたらす、より公平な社会の実現に貢献することになるのです。

採用の観点からも、DEIは優秀な人材を惹きつけ、維持するために不可欠です。DEIは、さまざまなバックグラウンドを持つ従業員にとって、より深い帰属意識を生み出すものであり、進化する多文化社会に生きる私たちにとって、ますます重要となっています。社員が満足すれば自身の成長にも大きく影響し、またその社員が優秀な人材を紹介してくれることもあるかもしれません。DEIアプローチは人材獲得の要素として、非常に有効に機能していきます。

日本は現在、高齢化、少子化、労働人口の減少といった人口動態の問題に直面しており、事業規模を拡大しようとする企業にとって課題となっています。DEIに対するポジティブな考え方は、こうしたギャップを埋めることを容易にし、イノベーションを起こす可能性を与えてくれます。そして、多様な視点、経験、アイデアを活用することで、より幅広い解決策を見出すことができるのです。

 

リーダーシップにおける女性の役割は、今後どのように進化していくと思いますか?また、この分野の進歩を加速させるために何ができると思いますか?

私は、現在の女性の役割の進化の方向性は間違っていないと思っています。これらの大きな潮流が日本や世界で、より多くの女性が指導的な役割を果たす助けになることを確信しています。シニア層レベルの女性管理職については、まだまだ必要な数には達していませんが、ミドルマネジメント層では明らかに増えてきています。

必要なのは、ステークホルダーやシニア層レベルの管理職など、すべての意思決定者が、DEIを推進するための統一した取り組みとコミットメントを持つことです。そうすることで、ミドルマネジメント層が積極的に会話に参加することができ、DEIに対するDNAが組織全体に浸透しやすくなります。ダイバーシティ、エクイティ、インクルーシビティが何をもたらすかを十分に理解しないまま、ノルマを達成するために、単に強制しようとすれば、DEIのメリットを十分に享受することはできないでしょう。もう一つのポイントは、より多くの男性を巻き込むことです。

 

より多くの女性がリーダーとして活躍できるようにするために、雇用主は何をすればよいと思いますか?女性が会社で昇進するために、シニアリーダーは何をすればいいのでしょうか? 

重要なのは、会社全体でこの話題を気軽に話せる雰囲気を作り、意識を高め、知識を高める場を提供することです。そして、ジェンダーの多様性と包摂を促進する取り組みやプログラムを実施することです。そうすることで、いざ変化を起こそうというときに抵抗が少なくなります。例えば、メンター制度、柔軟な勤務形態、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に対する勉強会、女性のスキルアップのためのトレーニング機会の提供などがこれにあたります。

もう一つ重要なことは、成果とスキルに基づいた適切な評価システムを持つことです。当社で行った会社員へ向けた調査では、驚いたことに、大多数の企業が人事評価と成果が結び付いている評価システムを導入していないか、導入していても機能していないことがわかりました。

 

ダイバーシティとインクルーシブを推進するために、組織でどのような取り組みを行っていますか?

当社のED&I(Equity, Diversity & Inclusion)カウンシルは、今年で3年目を迎え、より公平で包括的、かつ開かれた職場にすることを目的としています。私たちは、チームや個人が特定の問題についてどのように感じているかを測定するために、社員へ向け定期的な調査を行っています。このフィードバックや意見に耳を傾け、変化を必要とする場合には、会社全体が理解し納得できる取り組みを議論します。また、方針や社内改革を実施した後も、その進捗を評価するために、従業員との面談を続けています。

 

カウンシルの活動の中で重要なことは、誰にとっても有効なインクルージョンの文化を醸成することです。それは単にジェンダーや職場における女性の地位向上だけでなく、マタニティポリシーや育児支援など、より広範な範囲に及ぶものです。グローバルダイバーシティ月間では、ウェビナーやセミナー、啓発キャンペーン、イベントなどを開催し、互いに学び合う機会を設けています。また、半年に一度、DEIチェックインとグローバル従業員エンゲージメント調査を実施し、何が有効で、どの部分に手を加える必要があるかを議論しています。この調査をきっかけに、バディ制度やメンター制度、マネージャーとコンサルタントの双方向のフィードバックシステム、評価・育成プランなどの取り組みが生まれています。しかし、そうは言っても、我々がDEIを理解し、それを完璧に社内で生かせているというわけではありません。まだ学びの途中だと思いますし、やるべきことはたくさんあります。

 

企業がDEI戦略を立てる際に、交差性はどのような役割を果たすのでしょうか? 

まず、DEI 戦略を立てようと考える際に、多くの企業、特に日本ではDEIの主要な推進力として、ジェンダー・ダイバーシティにのみ焦点を当てる傾向があります。これは間違いなく非常に重要な内容ではありますが、効果的なDEI戦略を立案する際に考慮する必要がある他のマイノリティグループが存在することを無視してはいけません。

第二に、ジェンダー・ダイバーシティは、時に非常に狭い視野で考えられてしまっています。多くの企業では女性を一枚岩のグループとしてとらえる傾向があり、ジェンダーという言葉を正しく理解していないことがあります。また、一部の企業ではジェンダー・ダイバーシティと女性はイコール「母性」としてしかとらえていません。そのため、いくら積極的に活動しても正しい角度からアプローチできていないため、DEIの特質が十分に機能していません。実際には、ジェンダー・ダイバーシティは、母性だけにとどまらないのです。すべての女性が母親になるわけではありませんし、母親にならないと決めている方もいるのです。ですので、ジェンダー・ダイバーシティへの取り組みは、単に産休や育児をサポートするだけにとどまらないのです。

重要なのは、さまざまなアイデンティティや属性が交差していることを認識することであり、この交差性が人々の体験、会社の発展に大きな役割を果たすのです。

例えば、私は外国人の女性であり、日本では、異なる民族に属し、また特定の年齢層に属しています。さらに、私は母親です。この組み合わせは、私にとってユニークな経験であり、同じチーム内で同じ組み合わせや境遇を持たない他の女性の経験とは大きく異なることがあります。

 

キャリアの早い段階で誰かにアドバイスしてもらいたかったと思うことはありますか?それぞれの分野でリーダーを目指す女性たちにアドバイスをお願いします。

恐れずに発言し、自分自身に自信を持つことです。時には、自分の熱意を声高に主張することも必要です。そして、多くの女性が管理職やリーダーポジションにつきにくいのは、それが自分のやりたいことであると明確に表明していないからです。多くの男性は通常、管理職のポジションに就きたいとイメージを持ちますが、女性は自身が管理職やリーダーポジションに就きたいという気持ちを声にして表現する必要があります。

また、評価制度が整っていない会社では、誤った思い込みが生じることもあります。女性はインポスター症候群に陥りやすく、オファーされた仕事に対する自分の能力を疑ってしまうことがあります。私たちは皆、時に自信喪失に陥りますが、それによって目標を追うことを止めるべきではありません。また、先輩から十分なサポートや指導を受けていないのであれば、その指導を受け、成長をサポートしてくれる外部のメンターを探しましょう。

 

国際女性デーにちなんで、世界中の女性にメッセージをお願いします。また、男女平等を実現するために、私たちはどのように協力すればよいでしょうか?

まず、現在リーダーシップを発揮している女性へのメッセージです。他の女性がキャリアで成功できるよう、力を与え、指導してあげてください。

そして、多くの女性たちへ。自身の目の前にチャンスが巡ってきたら、手を挙げ、発言し、そのチャンスをつかむために進んでください。その役割に必要なレベルに達していないと感じることもあるかもしれませんが、経験を通じて成長することができますし、リーダーシップとは、時間をかけて継続的に構築されるスキルなのです。リーダーシップへの追求は、完成された形態はなく、常に進化を続ける旅のようなものなのです。

最後にすべての管理職、リーダーポジションの方へ。女性たちがリーダーとして飛躍するためには、何気ない少しの励ましが、彼女たちの成長の大きな力になることを知っていただきたいです。